元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

韓国の日本語学校 経験談

日本語に対する学習意欲が非常に高いです

公開:2019/02/20

カウル(女性・35歳) 
日本語教師歴 1.5年 (2017年~2019年)
*現在も日本語教師として就労中
資格・課程 日本語教師養成講座420時間(YMCA)
韓国の日本語学校
経験詳細
  • 地域:ソウル
  • 月収:16万円(160万ウォン)
    現地で生活をするのに十分
  • 専任講師(正規雇用)
  • 1年(2017年~2018年)
    *現在は退職

私は、韓国にある民間の日本語学校で、専任講師としてマンツーマンレッスンとグループレッスンを担当していました。日本の隣国ということもあり、日本語を学ぶ学習者が多く、熱意に溢れていました。もともと学習熱心で知られる韓国なので、学習者の質も高く、積極的に授業に参加する態度が素晴らしかったです。

さらに、近年、日本での就職を目指す韓国の若者が多いため、目的を明確に持って学習する姿勢が見られ、日本語教師をスタートするにはとても教えやすい環境でした。

専任講師のスケジュールは、平日11:00~20:00の8時間勤務、土日祝は休みで、残業は特にありませんでした。給与は決して多くはありませんが、生活する上で不自由はありませんでした。

私が日本語教師として教壇に立つ上で最も意識していたことは、学生一人ひとりのレベルや目的にできるだけ合わせるということです。グループレッスンでは、いろいろな学生が一つのクラスにってきますが、細かく見ると、学生によって足りない部分はそれぞれ異なります。例えば、漢字が足りない、敬語が足りない、文法が足りない、などです。そんな場合はそれらを補完してあげるように、レッスンに取り入れたり、別に宿題を与えたりして、学生一人ひとりに細かく目を配って指導できるように心がけていました。

教師としては当たり前のことですが、マンツーマンレッスンと区別して、授業料の安いグループレッスンを設けている学校側としては、決められた教材や授業内容以外を良しとしない面もありました。そこで私は、日頃から学校運営側や他のスタッフとのコミュニケーションも十分に取るよう意識していました。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

文法や単語など、日本語は韓国語と似ている部分が多いですが、やはり学習者が苦労するのは文字です。漢字、ひらがな、カタカナを正確に覚えるには、相応の時間と労力がかかります。特に、日本は地理的にも旅行やビジネスで接することが多い分、会話能力が高いのに、正しく読み書きができないケースが多くあります。

また、高校で英語以外に第二外国語を学ぶ韓国では、日本語を学生時代に少し勉強した学習者も一定数います。しかし、周囲の先輩や同級生から「カタカナはあまり使わないから覚えなくてもいい」と言われて勘違いしている学習者も多く、カタカナの指導に苦労しました。

結局は本人が覚えるしかないのですが、50音表を一つひとつ切り分けて、学習者に見せながら即答できるまで繰り返し練習したり、頻出漢字を復習させたりすることで、学習をサポートしました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

自宅のある仁川から遠く、ソウルにある学校まで往復3時間かかるため、退職を考えていました。ちょうどその頃、学生の少ない平日昼間の授業を廃止し、社会人の通える平日夜間の授業時間を延長する方針が、学校側から提示されました。スケジュールの変更を機に、退職しました。

給与・待遇

月収 月収:16万円
月収内訳 基本給:16万円
基本労働時間 1日8時間 週5日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇
  • 有給休暇
  • 賞与(年間45万円)
  • 保険(国民年金、国民健康保険、雇用保険、労災保険)
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇 長期休暇なし  

毎月の給与は決して多くありませんが、韓国で生活するには不自由しませんでした。

ただし、韓国の住居はジョンセ(契約保証金を預けることで毎月の家賃はかからない)とウォルセ(契約保証金を預けて、毎月家賃を払う)という制度があり、どちらも契約時に一定のお金が必要です。一人暮らしが多いウォルセの場合、保証金約20~100万円、毎月の家賃は約3~8万円が必要です。もちろん地域によって異なります。

この住居契約に必要な資金は学校が準備してくれるものではないので、指定ワンルームの提供がない学校の場合は、本人が予め準備しなければなりません。

韓国には交通費の支給はありませんが、年2回、旧盆と旧正月には、贈答セットをもらいました。日本のお中元やお歳暮のように、シャンプーや缶詰などの生活用品でした。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

私は、給与や待遇面では、他の教育機関と比べて満足していました。給与は決して多くありませんでしたが、残業もなく、休日がしっかり確保されていたからです。そしてなにより、授業スケジュールが重要です。

韓国の場合、多くの学校が授業スケジュールを早朝(6:00~)と夜間(18:00~)に設けています。そのため、朝出勤して一度帰宅し、夜間に再度出勤する、時間制の日本語教師を採用する学校が多いです。

また、韓国で大手と呼ばれる民間の日本語学校がいくつかありますが、授業を予約した学生が急に欠席した場合、教師は出勤したにもかかわらず、時給をもらえないところもあります。授業スケジュールや待遇を考えると、時間的にも経済的にも働きやすい職業とは言えません。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態
  • クラス授業:1クラス5人
  • プライベートレッスン
学習者の年代
  • 中学生
  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人
  • リタイアした70~80代
1日の時間割 月曜日
  • 11:00~20:00  
    初級~上級まで8コマ
火曜日
  • 11:00~20:00  
    初級~上級まで8コマ
水曜日
  • 11:00~20:00  
    初級~上級まで8コマ
木曜日
  • 11:00~20:00  
    初級~上級まで8コマ
金曜日
  • 11:00~20:00  
    初級~上級まで8コマ
休日 土・日
一日休めていました

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

私の勤めた学校は、クラスの最少人数を設けておらず、一人でも予約があればクラスが開講されました。学生は授業開始時刻の10分前まで予約を入れることができるため、急に学生が入ってくることが多々あり、とても大変でした。

そのため、いつ学生が来ても指導ができるように、学生ごとにファイル分けしたり、前回よくできたこととできなかったことをメモしたりすることで、急なスケジュール変更にも対処できるように工夫しました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
みんなの教材サイト
書店で売られている既存の教材ではなく、現在国内外で活躍している日本語教師が直接作成した教材を共有できるサイトです。授業をしながら必要だと感じる時にこのサイトを探すと、副教材としてとても使いやすいものが多いです。完成度が高くないものもありますが、自分が使いやすいように追加や削除をして活用しています。
参考になる書籍
  • 初級日本語文法と教え方のポイント    
    対象者:初級
    主に授業作りのために活用しています。学習者が難しいと感じる点を誤用例とあわせて解説しているので、とても使いやすいです。いくら会話の授業とはいえ文法についても分かりやすく説明できるよう、常にこの本を読んでいます。日本語ネイティブが気づきにくい学習者の疑問を理解しておくと、授業がスムーズになります。
  • 中級日本語文法と教え方のポイント    
    対象者:中級
    主に授業作りのために活用しています。学習者が難しいと感じる点を誤用例とあわせて解説しているので、とても使いやすいです。特に中級は似たような表現が出てくるので、違いを分かりやすく説明できるようこの本を読んでいます。日本語ネイティブが気づきにくい学習者の疑問を理解しておくと、授業がスムーズになります。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

初級用の絵カードを準備しておくべきでした。基本的に授業では日本語以外を使用してはいけないことになっているので、初級の場合は、絵やジェスチャーがとても重要になります。もちろん、手書きやインターネットで探してきてもいいのですが、頻繁に使うものなので、きちんとした絵カードがあれば便利だったと思います。

日本語教師向けの文法解説本を準備しておいたことはとても役立ちました。私の場合は、周囲に他の日本語教師がいなかったので、インターネットで情報収集するには限界がありました。文法解説の書籍がレベル別にあれば、授業で困ったときにすぐ活用できました。

学生用の日本語テキストは、文法、会話、JLPT、ビジネス、フリートーキングなど、現地でも目的別にかなりの種類が販売されているので、準備しなくても困りませんでした。ただし、上級なのに漢字にフリガナがあったり、日本語の発音がハングルで表記されていたりするものもあるので、しっかり見比べて準備することをおすすめします。

就職活動

国選びで重視した点
  • その国の母国語が得意
  • 渡航経験があった
  • 日本との距離
現地における
日本語教師の需要
強い人気があり、多くの学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 必須資格
  • 授業スケジュール
応募時に
必要とされた資格
日本語教師養成講座420時間終了
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外:現地

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

韓国では、地理的にも文化的にも接する機会の多い日本語の需要が多い国です。さらに、韓国国内の就業難と日本の人手不足という社会的要因も重なり、日本語を学ぶ学生が増えています。

最近では、従来の一般企業への就職だけではなく、モデルや俳優、サッカー選手として日本進出を目指す学生もいます。そのような学生は、特に専門用語やイントネーションを重視した授業作りが必要となりました。今後も多方面で日本語教育の需要は維持されると思います。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

応募の時点で特に語学力は問われませんでしたが、面接は全て韓国語で行われました。主な質問は、日本語の教育経験や韓国で仕事をする上での心配事、これまでどんな業務をしてきたか、強みや弱みでした。日本で行われる一般的な就職活動の面接と大きな違いはありませんでした。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

やはり日本語教師養成講座420時間修了、日本語教育能力検定試験合格、大学で日本語教育主・副専攻のいずれかを持っていることが就職には有利です。必ずしも必須要件ではない学校もありますが、応募者が複数いる場合には、資格保有者が優先されます。

また、日本の高校生や大学生がそのまま韓国で就職を希望するケースも多く見られますが、日本語学校で会話指導のビザを発給してもらうには、大卒が要件となります。

韓国は競争社会と言われるだけあって、教師に対する学生の評価もやや厳しいです。授業に満足できず、学生の入れ替わりが激しい学校もあります。どれだけ学生の求める授業ができるか、授業の工夫を欠かさず、研究し続ける資質が必要です。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • コネスト
    韓国で生活するために有益な情報がたくさん掲載されている。求人情報やビザに関する情報を得られる。
  • 日本村
    日本語教師の求人が随時掲載される。
その他求人情報
紹介:日本語教師としての経歴があれば、知人や友人から学校を紹介されることも多い。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

一番の決め手は、授業スケジュールでした。韓国の場合、学生の多い早朝と夜間に授業を行い、昼間は授業時間を設けていない学校が多いため、日本語教師は時間的にも経済的にも働きやすい職業とは言えません。

そんな中で、私の勤務した学校は、1日8時間続けて勤務することができ、なおかつ専任教師としての採用だったので、この学校に就職しました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

もともと渡航前は、日本の大学の国際交流課で職員として働いていました。留学生の書いた奨学金申請書や研究企画書を添削することも多く、「いつか役に立つかもしれない」と思い、日本語教師養成講座に通うことにしました。その後、職場の人事異動で全く別の部署で働くことになったのですが、毎日留学生と接した国際交流課での仕事が忘れられず、日本語教師の道を選びました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

韓国にもたくさんの日本語教師がいますが、その中でも学生に選ばれた時は、日本語教師をやってよかった!とやりがいを感じます。韓国では、学生の教師に対する評価がシビアで、少しでも自分に合わないと感じたら、すぐに学校を変えます。

私の勤務した学校は、日本語教師が私一人だったので、人気のある時間帯に予約が取れない学生たちが、やむを得ず他の学校の無料体験に複数行ってみたそうです。でも、「やっぱり先生がいい」と言って、自分の予定を変更してまで私の授業に戻ってきてくれた学生が何人もいました。私はそんな学生たちがとても有難く、一生懸命やってきてよかった!と感じた瞬間でした。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
日本語教師になるために、大学院までの学歴は必要ありません。大学の専攻が日本語でない方は、日本語教師養成講座を修了することをおすすめします。ビザの必須条件である大卒まで終えたら、日本語教師として働ける準備が整い次第、教える経験を積んでいきましょう。

でも、日本での社会人経験がないというのは、のちに日本語教師として少し足りない部分になってしまいます。ビジネス日本語の授業では、日本のビジネスマナーや敬語、ビジネス用語などを教えなければならないからです。大学卒業後すぐに日本語教師になるためには、日本語だけでなく、日本の常識や慣習、ビジネスなど多岐に渡る知識を得られるよう心がけてください。

【社会人の方へ】
まずは日本語教師養成講座を修了することをおすすめします。その後、日本語教育能力検定試験に合格まですればいいですが、必須条件ではありません。現在の年齢や将来計画に照らし合わせて、早く日本語教師としての仕事をスタートさせてもいいでしょう。あくまで、最低限の資格があれば、あとは経験が重要だからです。

日本で社会人経験があるというのは、日本語教師としてとても大きな強みになります。その強みを最大限活かして、今度は日本語教師としての経歴を積んでいきましょう。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

韓国は昔から日本語学習に対する需要が高く、日韓関係に左右されながらも、一定数を維持しています。韓国では特に即戦力として期待されるので、早く日本語教師として教壇に立ち、授業をこなし、経験値を上げることが重要です。

また、競争社会の韓国では、もちろん日本語教師として授業を工夫し、研究し続ける姿勢も必要です。韓国の学習者は全般的にとても意欲があり、積極的に学んでいます。そんな学生たちに日本語を教えることは、とてもやりがいがあり、教師としての自信になるはずです。

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