元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

カナダの日本語学校 経験談

給与充実ならば生涯したい魅力的な仕事

公開:2016/05/24
海外にほんご(女性・43歳) 
日本語教師歴 6年 (2003年9月~2014年9月)
*他業種に転職
資格・課程
  • 教員免許取得
  • 教員経験
カナダの日本語学校
経験詳細
  • 地域:バンクーバー
  • 月収:100,000円(1,000カナダドル)
    それだけでは生活は難しい
  • 非常勤講師(非正規雇用・コマ/時間勤務)
  • 5年(2003年~2010年)
    *現在は退職

きっかけは、ワーキングホリデーとして、渡加した時のことです。当時は英語力が非常に不十分で現地で英語を使っての仕事が厳しい状態でした。その時、募集していた、後に勤めることになる日本語学校に応募しました。

日本の特別支援教育諸学校における5年以上の実績は評価してもらったものの、居住権の有る者が条件ということで、採用されませんでした。しかし、数か月後、新クラスを開校するに辺り教員の欠員が出たということで、一番初めは、欠員が出た週1・90分クラスのみに特別に採用されました。

その後、現場実績を評価され、別口で就労ビザを発行され、長期滞在出来るようになってからは、受け持った授業数の支払いのみという形で、継続して採用されることになりました。その日本語学校に採用される教員の殆どは、授業時間だけの報酬となります。

生徒さんの質は、熱心で明るい方が多く、意思表示もハッキリしているので、教え易く、その熱意ある生徒さんから、私ももっと良い教材を用意したいという気持ちが高まり、教えることに虜になっていきました。それ程、魅力ある生徒さんばかりでした。

教えていくことで生徒さんの日本語の力がどんどん伸び、日本での活躍や、日本語を通して現地での目標を掴んでいくことが私の励みにもなっていて、生涯を通してしていきたい仕事と思えるほど、やり甲斐のある仕事でした。

ただ、生活出来る収入があればです。

上記にも述べましたように、常勤講師という採用ではありませんでしたから、授業時間のみの給与しか頂けませんでした。授業には、準備も必要ですし、授業後の採点、ノート点検、評価など、時間外労働に対しては、全く無給でした。

どちらかといえば、時間外勤務の方に割かれる時間が多かったです。

日本語教師だけでは生活できませんでしたので、週3日間は、日本語を教える家庭教師やベビーシッター他の仕事と掛け持ちで生活していました。

ですので、その他3日間は日本語学校勤務、休日は日本語学校で受け持つ授業の準備やノート添削等に時間を割かれ、私生活は殆どなく、厳しい生活を強いられました。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

苦労したことは、教材を集めることです。

小学科の生徒さんには、自分で読める教材として「絵本」が最適でした。中学・高等科、大人の生徒さんには、興味のあるマンガや雑誌などです。

古い物でしたら、現地にもありましたが、最新の物となると、入手が難しかったです。渡加する前には、絵本や雑誌、玩具や文具などを日本からいつも持参していました。また、帰国時には、日本のテレビ番組等を録画し、それも持参しました。

絵本はかさ張り、重さもあるので、後に紹介します「こどものとも」や「かがくのとも」などの薄手の絵本を持参しました。これらを用いることで、季節や日本の行事について学べたり、形や数の認識も膨らめます。

また、「にほんごであそぼう」から「さんまの踊る御殿」などのバラエティー番組を帰国期間中にまとめて録画したり、渡加した後も家族に録画を頼み、送って貰ったりして、日本の現状や流行りにあったものを視覚教材や聞き取り練習として取り入れました。

出来る限り「今の日本」も学んで欲しかったので、動画や電子辞書などの普及が少なかった当時は、教材集めに苦労しました。

日本の現状に合わせた内容を盛り込むと、一気にやる気も増すので、興味・関心に合わせた教材を用意することは欠かせませんでした。これら副教材の準備は全て実費ということも正直厳しかったことです。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

授業時間のみの給与でしたので、生活できるには不十分で、他の仕事との両立し、休日もなかったことが理由です。

教材研究や生徒さんのノート添削、テスト作成等、他の仕事と授業時間以外は殆ど教材研究だったり、添削だったり授業準備に充てていた為、睡眠時間を削って行う毎日でした。体力的に厳しかったことがあります。

そして、この日本語学校はNPO法人で、理事や保護者のボランティア活動、寄付やバザーなどの収益により成り立っており、教員も参加のバザーなどのボランティア活動も多々ありました。

そこに時間を割かれた負担も積み重なり、私生活が日本語学校関係のみになったことや、この生活がずっと続くのかといった、将来的な不安も覚え、結果、続けていくことが困難になってしまいました。

給与・待遇

月収 月収:100,000円
月収内訳 1コマ90分:2,250円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    200,000円(2,000カナダドル)
  • 最低限必要な月収
    150,000円(1,500カナダドル)
基本労働時間 1日4コマ 週3日勤務
残業(時間外労働) 1ヶ月合計96時間

  • 授業の準備
  • ノート添削,採点,宿題・テスト作成,評価,文集作成等
  • 学校で行われる各行事のボランティア協力
待遇 スタッフの好意による食事の支給
教育機関が
用意してくれたもの
なし
クラスの長期休暇
  • 夏休み:60日
  • 冬休み:14日
  • 春休み:7日
クラスの長期休暇中の
給与保証
  • 長期休暇中は別の仕事をしている
  • アダルトクラスや夏期・冬期講習のクラスを担当すれば給与有

授業時間だけの給与でしたので、日本語教師だけでは生活していけませんでした。

移民して長い現地の教員も校長と事務員の2人以外は、全て他の仕事と掛け持ちで行っていました。

NPO法人の組織で、財源は授業料と寄付、理事や保護者、OG、OBなどのボランティアで行うバザー活動によるものでしたので、教員に払われるのは授業料だけで学校としては、運営上精いっぱいでした。

全体がボランティア活動で成り立っている学校、理事や保護者のボランティア意識が高く、給与待遇の充実を求めにくい雰囲気があったことも事実です。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

グレーターバンクーバー全体で13校の日本語学校がありましたが、常勤として採用しているのは1校。宗教法人による常勤扱いが1校でした。

一般に常勤採用しているその1校は給与も$2,000(約20,000円)は保障されていて、その日本語学校だけで生活できるようでした。

面接もしましたが、ただ、余りにも日本にある学校の内容と変わらず、成績の伸びが重視で、職員の雰囲気も日本の教育現場を思わせるものでした。

その点、勤務していた学校は、給与面の待遇は悪かったですが、現地の学校との交流があり、バザーや行事などを通して、地元の方々と触れ合う機会が多く、地元と関係の深い日本語学校ということで、選んだこともあります。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態
  • クラス授業:1クラス10人
  • プライベートレッスン
学習者の年代
  • 小学生
  • 社会人
1日の時間割
  • 9:00 ~ 12:00  
    小学科(普通科・国語の教科書を使用)を2コマ
  • 13:00 ~ 16:00  
    小学科を1コマ、アダルトクラスを1コマ
  • 16:30 ~ 20:30  
    次週の準備、添削、宿題作成など
休日
  • 日曜日
    休日に取り組んだ仕事:授業時間前後では処理しきれない授業準備や添削など。少なくとも月に1回はバザーなどの行事にボランティア参加。
その他
  • 18:00 ~ 21:00  
    アダルトクラス2コマ
  • 21:00 ~ 23:00  
    アダルトクラス次週の準備、添削など

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

殆どのクラスが週1回授業でしたので、授業をした直後に、出来る限り次週の準備をすれば、授業内容や課題が明確なうちに、効率良く準備が出来ました。

ですので、夜のクラス後に深夜に及んで学校に残って準備をしました。

午前クラスには、早朝から出勤して準備をしたり、年度末には、授業と同時進行で、文集作成や評価もありましたので、学校で夜通し仕事をしたり、授業準備は睡眠時間を削って行いました。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
日本の昔話 / 福娘童話集   

主に小学科生徒さんを対象に導入。読解、リスニング、文化理解等も含め、授業には毎回、お話を聞かせたり視聴させたりして、教科書以外の目先を変えました。

※参考にしたその他方法
日本語で遊ぼう、しまじろう、日本昔話を録画再生 / 授業のテーマや季節行事に関連した内容を盛り込み、子ども達の興味や関心を引き出したり、集中力を持続させたりする。授業にメリハリがつき、前後も集中する。

お笑い・芸能・ニュース番組 / 日本で人気のある番組やトピックス等の視聴を毎回10分程度取り入れて、日本の今に注目してもらう。(リスニングにもなる)よりネイティブに近い発音等。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

日本文化を伝えられる技術があると大変重宝されると思いました。

例えば、書道や茶道に始まり、武道も教えられる技術があると、生徒さんが集まりますし、特別な講座も開講できるので、教えに幅が拡がると思います。

実際に、ワーキングホリデーで滞在後、一時帰国している間に、着付け教室に通い、着付け免許を取得して再度渡加しました。着付け体験を現地の方にして貰えて、とても好評でした。

日本語は言葉だけでなく、同時に文化も教えることになるので、一芸に秀でていたり、文化にも精通していたりすると、授業内容や生徒さんの興味も膨らみ、やがては、日本語力も高まります。

就職活動

国選びで重視した点
  • 治安
  • 親日国
  • 気候
現地における
日本語教師の需要
人気があり、一定数の学校で求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 学校の規模
  • 通勤時間
  • 地域に根差した日本語教育、地域社会との繋がり
応募時に
必要とされた資格
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外(現地)

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

日本からの就労や移民等、一世の日本人移住者も増えてきていますが、第二次世界大戦以前から移住していた日本人の家族が日系三世、四世などと繋がり、継承教育としての、日本語の需要は多いです。

また、現地や日本にある、日本企業への就職も人気があり、仕事に使える日本語習得など、観光に必要な日本語力だけでなく、ビジネス日本語の需要もあります。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

面接をした日本語学校を選んだ理由を聞かれました。そして、なぜ日本語を教えたいのかということにから、日本の現場実績について、どんなことをしていたのか聞かれました。

更に、この学校は理事と保護者や卒業生のボランティア活動によって成り立っている学校なので、教師にもボランティア活動を要請されることがあること、給料に関しては、授業時間分しか払えないことを確認されました。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

日本語教師の資格があれば最適だと思います。また、日本の教員免許を所有し、現場経験があることも、実際の生徒さんを教えていくうえで、土台になります。

先述しましたが、文化も伝えられる「道」の資格があるとより良いと思います。合気道や剣道などもサークルがあり、教える技術があれば、日本語教師だけの給料では足りない時に、助けにもなると思います。

また、折り紙や剣玉、お手玉など、日本の遊びも理解して出来ると日本語を教える幅が拡がります。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • バンクーバー新報
    バンクーバー全体の生活情報誌。ニュースも載っているので現状を把握しやすい。領事館情報もあるので、公的な情報も得られる。
  • Oops
    生活情報全般が載っている。日本語教師の求人もある。

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

カナダの文化や生活様式を味わいながら、日本文化や日本語を教えられる学校でしたので決めました。

応募時に面接をした他の常勤採用の学校もありましたが、学力が重視されている点や全体の雰囲気が日本の学校と変わらない印象を受けました。

その点、この学校は地域との結びつきが深い所、学校を運営されている理事の方々や卒業生など、日本にいる日本人より日本の文化を理解し、愛し、継承している姿に惹かれました。

運よく、教師不足を補う人材で出発しましたが、生徒さんだけでなく、保護者や理事、職員の方々の温かな雰囲気に恵まれ、長く勤めることになり、給与ではかえられない貴重な現地の経験をさせて頂きました。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

日本で特別支援教育を専攻しており、現場実践もしてきました。

言葉を習得していくことには興味があり、語学の獲得も自分が実践と学習してきた分野にとても共通する所があり、初めてでしたが、自分のこれまでの経験と技術が活かせると思い、応募しました。

また、英語圏において英語が十分に話せず、選択肢が狭まっていたことも、結果として、自分の好きなことと技術を活かせ、適した仕事に就けることに繋がっていました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

やはり生徒さんが日本語を話すことが好きになり、どんどん上達していった時です。

また、目標であった日本での就職や日本の学校の試験を通過した時など、生徒さんの目標達成が、私自身の活力になりました。

生徒さんの生き生きとした姿を見たり、私の授業を楽しみに来てくれたり、何よりも日本が好きになってくれる様子を目の当たりにしたりすると、睡眠不足になっても、他の仕事と掛け持ちをしてまでも、日本語を教える魅力に浸かり、より魅力的な授業作りをしようと励んでいました。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

掛け持ちで仕事をしていたので、授業準備などにかける時間で睡眠不足と重なり、体力的に厳しくなっていったことです。

そして、私生活の殆どを日本語教育に費やしていた単身の当時、このまま異国の地でずっとこの生活が続くのかという、将来に不安を覚えたこともあります。

経済的に安定していれば、ずっと続けたい仕事でしたが、やはり日本語教師だけでは生活が出来なかったことは大きく、単身ゆえ、仕事の負担も増えていったことも影響されました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
どのような過程を習得しても、日本語教師の420時間の養成講座を修了したことや日本語教育能力検定に合格していることが必要ですので、取得してください。また、カナダにおいて、420時間の養成講座を取得することも可能です。

学校によっては、日本での日本語教師や日本の教員としての現場実績を評価して採用してくれるところもありますが、いずれにしても資格を取るなり、現場経験を積むなり、日本語や教育に関わりがあることが優先されます。

日本語教師は教え甲斐のある、魅力的な仕事だと思います。どうして日本語教師になりたいのか、具体的な意志を持って臨まれることをお勧めします。

海外では生活様式も違えば、生徒さんの受け止め方も様々ですから、違いを受け入れて、日本を紹介したいという明確な目標を持っていれば乗り越えられるのではないかと思います。

【社会人の方へ】
大変貴重な経験になりますし、自分自身の幅も拡がります。いくつになっても、日本語教師として海外に出向くには、具体的な目標があると乗り越えやすいと思います。

しかし、日本語教師の待遇は決して良いものではありませんから、ボランティア生活でも暮らせるという覚悟とある程度の貯蓄があると、教えの仕事に専念できるのではないかと思います。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

何度も申しますように、日本語教師の待遇がもう少し良ければ、生涯を通して続けていきたいと思える、一生の仕事に出会えました。

日本語を教えることは、「日本」を教える、伝えることと切り離せません。日本に生まれ育ち、当たり前にある環境を十分に理解せずに生きてきましたので、日本について一番勉強したのは、カナダに渡航してからでした。

当たり前にあるこの行事や文化背景も十分に理解しているといいと思います。

また、日本語教師になって、他国との違いを存分に学ぶことも出来ました。世界の中の日本という存在。異文化を受け入れ、思考が随分柔軟にもなり、人間の幅をもたらしてくれる仕事でもあります。

日本語教師として、生徒さんが楽しめる授業を展開出来るというご活躍と、日本語教師の待遇の改善を強く願っています。

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