元日本語教師による
日本語教師の実態レポート

日本語教師になるにはどうすればいいの?資格はいるの?どんな風に教えるの?
具体的な経験を交えながら、教師の仕事について
"元教師"が実態をお伝えします。

シンガポールの日本語学校 経験談

学生は勤勉。教師にとって、この国は天国

公開:2016/02/29
ひまわり(女性・33歳) 
日本語教師歴 5年6ヶ月 (2009年~2015年)
*他業種へ転職活動中
資格・課程 日本語教師養成講座420時間(ヒューマンアカデミー)
シンガポールの日本語学校
経験詳細
  • 月収:156,000円(2,600シンガポールドル)
    かなり生活に余裕がある
  • 専任講師(正規雇用)
  • 2年(2010年~2011年)
    *現在は退職

私は働きながら、養成講座に通いました。その当時、日本国内では未経験者は専任雇用がほぼなかったため、海外で探すことにしました。

日本語教師の求人があるのはアジア圏。日本と同程度の収入が期待できるのは、韓国とシンガポールだと思い、英語が通じることからシンガポールを初めての日本語教師の場に選びました。

日本語学校に来る学生のほとんどは社会人のため、クラスは平日の夜か土日です。みんな好きで日本語を勉強しに来ていたので、授業中は真面目に勉強に励みます。(日本国内の学生は、日本語の勉強が目的じゃない学生も多く見られるので、授業中の居眠りや私語を注意しなければならないことも多いです。)

シンガポール人は中国語と英語(どちらもかなりシンガポール訛りがありますが)が話せるので、言語習得が速いように感じます。

中国語の表記ももちろん問題ないので、漢字は教える必要がありません。(シンガポールで漢字の授業を一切しなかったため、日本での漢字授業では本当に苦労しました。)

熱心な学生が多いので、授業でもいろいろな質問がありました。そのため、授業準備には膨大な時間をかける必要があります。

しっかり準備をして授業に臨めば、学生の反応もいいです。(準備していてもうまくいかないときもありますが・・・)それがあるから、睡眠時間を削ってでも準備や採点をしようと思います。

最初に苦労(?)したのは、シンガポール人の反応が薄いこと。冗談を言っても無反応。最初の半年ぐらいは学生の気持ちがわからなくて、少し疎外感を感じました。

後で気付いたのですが、シンガポール人はあまり感情を表に出さないようです。そして、シャイ(?)な性格の人も多いのかもしれません。

休日は週に1日です。休日も採点や授業準備に費やしてしまいますが、慣れてくれば自分の時間も結構持てます。

Q:現地で苦労した事、戸惑った事はありますか?

私が働いていた学校では、授業中も英語を使っての説明・質問が可能だったため、学生から時々英語で質問されることがありました。

でも、最初の頃はシングリッシュ(シンガポールなまりの英語)が全然わからなかったため、学生の質問したいことが理解できず困りました。

また、テストに対する意識が高すぎると言ってよいくらい高く、小テストでも必死で勉強してきます。小テストの結果なんて卒業に影響するわけでもないのに・・・。なので、テスト返却時はプライドが傷つかないように、あまり周囲の人に見られないように返却していました。

Q:なぜこの教育機関を退職しましたか?

30歳の時、カナダへワーキングホリデーに行きたかったため、退職しました。職場環境はとてもよかったので、常夏の国が好きだったら、一生いてもいいかなと思います。

給与・待遇

月収 月収:156,000円
月収内訳 基本給:156,000円
現地の月収事情
  • 市民の平均月収
    150,000円(2,500シンガポールドル)
  • 最低限必要な月収
    120,000円(2,000シンガポールドル)
基本労働時間 1日7時間 週6日勤務
残業(時間外労働) 残業なし
待遇 保険(軽い風邪などは無料で診療)
教育機関が
用意してくれたもの
  • ビザ申請費用
  • 日本との往復航空券
  • 授業で使用する教科書
クラスの長期休暇 正月休み:3週間  
クラスの長期休暇中の
給与保証
仕事はないが、給料は支給される 

その当時$2600もらっていれば、十分に生活できました。土地がないため、家賃がとても高く、一人暮らしは決してできません。2LDK~3LDKのコンドミニアムかHDB(役所が供給する公団)をシェアします。

しかしそれ以外は、いいコト尽くしです。バスも電車もタクシーも料金が安いため、交通費に頭を悩ますことはありません。仕事が終わって飲みに行っても、タクシーで帰ることに抵抗はありません。

好きな物を食べて、飲みたい時に飲んで、エステにも通って、など結構好きなことができます。貯金するつもりはありませんでしたが、3年間で、日本円で70万ぐらい貯まりました。

ひとつ問題があるとすれば、健康保険です。日本では永住権のない外国人も国保に加入し、手厚い保障を受けることができますが、シンガポールではシンガポール国民、または永住者のみが政府の積立保険制度への加入が義務付けられています。

永住権のない外国人は加入できないので、任意保険に加入する必要があります。雇用主が加入してくれるところもありますが、ないところもあります。その際は、個人で加入するか、または大きい病気やケガをしないことを信じて、保険に入らないかの2択です。

シンガポールは日本と違って、病院毎で値段が決められる自由診療です。政府系の病院は私立病院よりは費用が安いです。軽い風邪なんかだと10ドル程度で済むこともあるとか。逆に私立の専門のドクターを受診すると、何百ドルもかかるなんてこともあるそうです。

私は病気で病院には行きませんでしたが、歯医者には行きました。学校の加入していた保険は、症状の軽い疾病のみで、入院するような病気や歯医者はカバーしていませんでした。

私は虫歯が3、4本あって、3回歯医者に行き、その時に払った額は合計$800ぐらいでした。シンガポールの歯医者のいいところは、1回で集中的に治療をしてくれるところです。でも、ずっと口を開けているのがきついです・・・。

健康上問題のある人、そして日本人クリニックや私立の専門医を受診したいと考えている人は、しっかりと加入する保険について考えた方がいいでしょう。

ちなみに現在はEPビザ保有者の最低賃金が$3,000だそうです。日本円で24万程度です。

Q:現地における他の日本語学校と比較し、違いは感じますか?

私はシンガポールでは2つの日本語学校で日本語教師として働きました。1校目はシンガポールで1番規模が大きく、日本人の専任講師も何十人といるようなところでした。

しかし2校目の方が、1校目よりは待遇面はよかったと思います。保険もあったし、年に1回帰国するための航空券も出してくれたし、何より無駄な残業がありませんでした。

使用プリントを印刷したりするのは、全部事務スタッフがしてくれていたので、日本語教師はただひたすら授業準備と採点をするのみでした。他の先生と文法考察をしたり、授業のアイディアを出し合ったりすることができました。

授業形態・勤務スケジュール

授業形態 クラス授業:1クラス約30人
学習者の年代
  • 高校生
  • 大学生
  • 社会人
  • リタイア後の趣味で来ていた方々
1日の時間割
  • 18:00~22:00  
    1時間授業を2コマ(初級)
  • 土日13:00~17:00  
    1時間授業を3コマ(初級)
休日 水曜日と祭日
休日に取り組んだ仕事:どちらも、最初の頃はほぼ1日授業準備

Q:日々のスケジュール管理で、ここは大変だった!と感じた点はどこですか?

最初の頃は教案作成に本当に苦労しました。先輩に指導してもらいながら教案を何回も練り直すのですが、授業は待ってくれないので、自分の思い描く教案ができていなくても、授業をしなければならない。それが本当にいやでいやで・・・。

でも、自信のない姿を学生の前で見せてはいけません!なので、「笑顔と大きい声で!」を忘れずに授業をやっていました。

一番時間が取られるのが教案作成だと思います。ペア練習やグループ練習で、この活動おもしろそうだからやってみようと思ってやってみたら、うまくいかなかったことなどもありました。

やはり、経験がものを言うと思います。聞いてばかりだと煙たがられるかもしれませんが、いい案配で先輩に聞くのが一番の時間短縮法だと思います。

ちなみに別の仕事として、3年目に何度かプライベートレッスンもしましたが、初めてで学生の要望を全て飲んでいたら、マテリアルの作成にとても時間がかかりました。プライベートレッスンでもある程度こちらから提供できる範囲を伝えてから始めた方がいいと思います。

Q:教案作りで参考にしているサイトや書籍があれば、ぜひお聞かせください。

参考になるサイト
日本語を楽しもう   

擬音語・擬態語の授業のときに、使用例に使ったり、4コマ漫画の吹き出しのセリフを消して学生に考えさせたりしました。
参考になる書籍
どんどんつながる漢字練習帳   
対象者:初級
「この本を使って私も漢字の勉強をしたかった!」というぐらい漢字の勉強がおもしろく感じます。非漢字圏の学生の漢字授業にはもってこいです。私の甥が今小学1年生で漢字を勉強しているのですが、これを使って漢字を教えると、楽しそうにどんどん色々な漢字を覚えて行きます。日本人の知らない漢字のことが盛りだくさんです。
おたすけタスク   
対象者:初級
文型導入した後の練習に使います
日本語読み書きのたね   
対象者:中級
読解と作文の授業で活用できます。とても簡単な読解とモデル文を見ながらの作文、それから少しステップアップして、自分で構成を考えての作文と段階を踏んで、楽しく作文の授業ができるような教材です。

Q:現地に行く前に、準備しておくと良いものについて教えて下さい。

みんなの日本語の教案を作ってみておけばよかったと感じました。みん日はどこの学校でも採用していますし、教科書が違っても、教える文型はさほど変わりません。時間に余裕のあるときに、教案を書いておけばよかったなと思いました。

あとは、日本で書籍を購入して行った方がいいです。現地でも買えますが、高いです。

日本語教師として海外に行くのだから、茶道と着付けをかじっとく必要があるかな?と思い、半年だけ習ってからシンガポールへ行きました。茶道は役に立ちませんでしたが、着付けは学生に浴衣を着せてあげる時に、役に立ちました。

就職活動

国選びで重視した点
  • その国の母国語が得意(英語)
  • 経済水準:日本と大差のないところ
現地における
日本語教師の需要
一部に人気があり、数は少ないが求められている
教育機関選びで
重視した点
  • 給与(待遇)
  • 学校の規模
応募時に
必要とされた資格
選考方法
  • 書類
  • 面接
面接地 海外:現地
その時既にシンガポールの他の学校で働いていたため。
日本在住の人はSkype面接か担当者が日本へ面接に行っていました。

Q:現地で、日本語教育の需要はありますか?

日系企業が多数あるので、まだまだ日本語教育の需要はあると思います。しかし、日本の古い経営体質(サービス残業、就業後の飲み会、休日の行事)がそんなに歓迎されていないようで、現地での日系企業の人気ランキングは低いようです。

ビジネスでは使わなくとも、趣味で日本語を学びたい人は多いと思います。日本の食文化や音楽に興味のある人がとても多いように感じます。シンガポール人は旅行好きで、日本旅行に行く人も多いようです。そのため、旅行日本語会話を学びたいなどと言って、日本語学校に来る人もたくさんいました。

知人の話によると、最近ではシンガポールでも韓流ブームが凄いようで、韓国語を習う人が5年前と比べると、一気に増えたとは言っていました。

Q:面接ではどのようなことを聞かれましたか?

日本語で「~ないでください」の導入をした後で、英語で文法説明をするように言われました。

また前の学校での給料はどのぐらいだったかとか、週の授業のコマ数などを聞かれました。志望動機や学校でどのようなことを頑張りたいかなどといったことは一切聞かれませんでした。

Q:強みになる資格や職歴、資質や語学レベルはありますか?

日系企業で働いている方が多かったので、日本の企業での就労経験があるといいと思います。新卒で日本語教師になった人たちは、どうしてもビジネスマナーやパソコンのスキルがないため、仕事をする上でも、学生と接する上でも、難しいと思います。教師としての服装や態度は大切です。

また、英語か中国語がある程度できると、学生とのコミュニケーションがスムーズに図れて役に立ちます。

Q:その国の日本語教師に関する求人情報は、どこで得ましたか?

求人情報のサイト名
  • 日本村
    時々シンガポールの求人がある
  • Jegs
    時々シンガポールの求人がある

Q:この教育機関で勤務すると決めた決め手、きっかけを教えて下さい。

1校目は残業が多く、職場の雰囲気も悪かったため、帰国を考えていました。そんなとき、この学校の求人をインターネットで見つけました。

待遇がよく、授業準備にしっかりと時間がかけられることが魅力で、1校目からこの学校へ移りました。規模も大きく、シンガポールでは1校目に続き、2番目に大きい学校です。

日本語教師に関する全般の質問

Q:どのような経緯で日本語教師を目指しましたか?

私は大学卒業後2年間会社勤めをした後、中学生の頃からの夢だったカナダへ短期留学に行きました。その時に自分の英語力がどんどん伸び、英語でコミュニケーションが取れることにとても感動しました。

「英語が話せるとコミュニケーションが取れる人が一気に増える!言葉を勉強するって素晴らしい!」と思いました。その喜びをもっと多くの人に知ってもらいたいと思い、日本語教師を志しました。

Q:日本語教師をやってよかった!と、どんな時に実感しますか?

「先生が教えてくれると分からなかったこともすぐに分かります」と言われると、本当に嬉しいです。そしてその学生たちが日本語能力試験に合格したとなると、喜びは倍増です。自分が頑張った分が学生から返って来る瞬間だと思います。

日々の採点や宿題チェックをしている時に、学生の日本語の間違いにくすっとなって、ハッピーな気分にしてもらったり、こんな間違いするのかぁと思って、文法についてもっと調べ、勉強させてもらったりと、本当に日々勉強です。

Q:日本語教師を辞めたいと思ったことはありますか?

海外にいた頃、日本語教師を辞めたいと思ったことは一度もありません。毎日が新しいことの発見で、授業準備に追われながらも充実した生活を送ることができました。

日本で教え始めてからは、勉強する気持ちのない学生を寝させず勉強させなければならないため、起こしながら授業をしなければいけないことに嫌気がさしました。

Q:日本語教師になる為の進路についてアドバイスをください。

【学生の方へ】
日本国内で教えるか海外で教えるかで、状況は全く違うと思います。一生日本語教師としてやっていこうと思っていて、日本国内で教えることも考えているのであれば、大学で日本語を専攻し、大学院まで出るべきです。

そして、大学で教えた方がいいと思います。ちょっと教えてみたいなぁという感じであれば、まず海外で教えてみてください。日本語教師は自分の天職だと思ったら、それから大学院に入ってもいいし、海外永住するのもいいと思います。

【社会人の方へ】
1番安く日本語教師になる方法は、検定合格だと思います。試験勉強しかしないため、実際に授業をするときに教案を作るのが大変という同僚もいましたが、何とかなっていました。

養成講座は時間もお金もかかるので、時間的、金銭的にも余裕のある人は、養成講座は実習もあるので、養成講座がいいかもしれません。あとは、海外求人に応募するか、日本国内で非常勤講師としてスタート!です。

Q:日本語教師を目指す方へ、アドバイスをください。

まずは、日本語教師の経験のあるいろいろな人から話を聞いた方がいいと思います。

「結婚してパートで日本語を教えたい」とか「リタイア後、日本語を教えてみたい」とかなら問題ありません。ですが、まだ20代、30代で、自分の道が決まってない方は、「本当に日本語教師としてずっとやっていけるのか」をまず自分で調査した方がいいと思います。

本当にやりがいのある事ですが、待遇面を考えると、海外でも国内でも大学で教えない限り、同年代の一般企業で働く人と比べると、上限が低いと思います。

日本語教師だけじゃなく、どんなことを始めるときも、まずは下調べが肝心なのと一緒です。まずは、「本当に日本語教師になりたいか」を確かめてください。

そしてそう思うのであれば、日々勉強して、学生との素敵なコミュニケーションが待っています。万が一、日本語教師を辞めたいと思っても、英語力と社会人経験があれば、シンガポールでの転職も可能です!

↑ ホームへ戻る

P C S P